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世界ダム委員会Prepared for WCD by Minoru Kuriki 12年 3月 2000 1 設立の経緯世界ダム委員会(以下、WCD)は、大ダムの設置にあたって国際的に受け入れられ る基準を策定するために活動中の国際的な組織であり、国連等のいかなる既存の組織に も所属せず、その活動期間は98 年6 月からの2間に限定されている。 WCD の設立にあたっては、世界銀行(世銀)と環境NGO の世界自然保護連合(I UCN)が主導的な役割を果たした。直接の契機となったのは、世銀の業務評価局が9 6 年9 月に実施したダム事業に関する事後評価である。これは、世銀が過去に融資した 50 件の大ダムプロジェクト(60 年から90 年の間に事業が完了したもの)について 、当初予想されたとおりの便益が生じているかどうか、大きな環境社会的影響が特定さ れ、回避されているかどうか等の観点から調査を行ったものである。その結果、「対象 プロジェクトの9 割は融資承認当時の基準に合致していたものの、世銀の現行の政策に 合致するプロジェクトは約4 分の1 にすぎない」ことが明らかになり、同調査は(1) 経済的便益のみならず、環境社会面での影響等を含めた複合的基準からの検討を強化し 、(2)プロジェクト形成・審査における意志決定過程の民主化、多様な利害関係者の 参加や情報公開を一層促す必要性を指摘するとともに、次のステップとして、かかる視 点も取り入れて大ダム設置基準に関する詳細な調査を実施することを提言した。 世銀は、この提言をうけて、また、ダムの開発に対するかねてからの注目度の高さに も鑑み、パートナーシップ協定を結んでいるIUCN の協力を得て、9 7 年4 月にスイ スのグランドに政府関係機関、援助機関、民間企業、NGO など多様な利害関係者3 9 人を招いてワークショップを開催し、次のステップについて具体的な協議を行った。 ワークショップでは、「持続可能な開発」におけるダムやその代替案の役割を検討す る際に取り上げられなければならないダムの社会・環境・技術・財政面に関する主要な 問題が確認された。しかしながら、もっと重要なことは、このワークショップへの参加 者が構成メンバーとなってWCD 設立のための暫定作業部会が設置されたことである。 WCD は98 年2 月にワシントンで公式に発表され、98 年5 月に業務を開始した。 WCD は、政府、民間、市民のすべての積極的な参加なしには「地球規模の政策課題」 に対応することが、もはや不可能になっているという考えに立っている。 グランドのワークショップで決定されたWCD の二つの目的は次のとおりである。
WCD は、独立の機関である。水・エネルギー政策のような幅広い事項を扱うと同時 に、移転、補償、流域への影響など具体的な技術的問題や政策問題を扱うが、その性格 は、純粋に助言的なものである。WCD は、ダムに関する問題や経験を調査し、検討す るが、特定の論争について裁定を下すことはしない。独立性を損なうことになるからで ある。 WCD は、大ダムの社会・環境・経済への影響を検討し、「持続可能な開発」におけ る大ダムの役割に関する新たな理解を得ようとする今までにない包括的な試みである。 その勧告に拘束力はないが、WCD は、ダムとその代替案、及び「持続可能な開発」一 般に対する政策形成のための新たなアプローチを創り出するものである。 2 組織WCD は、委員長、11 人の委員(副委員長を含む)及び常勤の事務局員から構成さ れる。 2.1 委員(コミッショナー) WCD の12 名の委員は、様々な地域、専門知識、ダム論争における様々な立場を反 映して選定され、個人として職責をはたすものとされ、特定の団体や国を代表するもの ではない。 別添1 に委員のリストを示す。このうち、Shen Guoyi員は99 年12 月をもって辞任している。後任の補充はされていない。 2.2 事務局 南アフリカのケープタウンにあり、世界の広い分野のすぐれた専門家チームが含まれ ている。10 人の工学、システム計画、経済、政治・制度、移転、人類学、流域・水資 源管理、生態学、環境政策、コミュニケーションの専門家が、アジア、アフリカ、ヨー ロッパ、ラテンアメリカ、北アメリカからリクルートされている。また、インターン制 度を設けており、半年から1 年程度、学生等を有給で雇用している。その数は、200 0 年3 月時点で8 名である。 2.3 WCD フォーラム WCD フォーラムは、幅広い利害関係、見解、機関を代表する7 1 の組織で構成され る諮問グループであり、委員会に対して継続的に情報を提供する。その役割は次の通り である。
長期的には、WCD は2000 年にWCD の最終報告書が発行された時点で、WCD フォーラムに同報告書の世界への普及を促進するための協力を要請することになるであ ろう。 99 年3 月に第1 回のフォーラム会議が開催されたが、その締めくくりに当たって、 WCD 議長は、フォーラムとのパートナーシップを確立・強化し、継続的な討論を確保 するために、次のステップを提案した。
別添2 にフォーラムのメンバーリスト(2000 年3 月現在)を示す。 3 業務計画2 年間の業務計画のすべてのレベルと段階に、「参加の仕組み」を取り入れたのがW CD の特徴である。こうすることにより、すべての利害関係者に対する「合法性」、「 説明性」、「信用」が確保された国際的対話の場を提供しようとしているのである。利 害関係者からWCD のプロセスに対する情報の提供も重要である。WCD のプロセスに 対する利害関係者の参加のレベルが高ければ高いほど、WCD の報告書の価値の価値が 高まり、これが国際社会に受け入れられる可能性が高くなる。WCD はこのような参加 を確実にするために、すべての業務計画の活動に協議メカニズムを組み入れた。国内で の協議もケーススタディの一部となる。 WCD は、独自に検証した「知識ベース」を作成する目標を立てており、これは要約 されて次の3 つのアウトプットとなる。
最終報告書では、調査結果の要約とこれに基づく「勧告」が示される。 こうした業務計画のアプローチは、ダムの実績と開発有効性に関する論争の中で利害 関係者が提起した主要課題によって形作られている。 業務計画は、次の4 段階に分けられている。 第一期: WCD の目的、アプローチ、業務計画の作成、及び、南アメリカ国、ケー プタウンにおける事務局の設置の段階。 第二期: WCD の知識ベースを形成する情報の収集段階。これには、次の4 つの主 な活動が含まれている。
各活動は、さまざまなレベルの見識を得、ダムおよび「持続可能な開発」をめぐる論 争のさまざまな意見を聞くことを目的としている。 第三期: 多くの専門分野と広い視野にわたる定量的、定性的な調査結果である「知 識ベース」を総合し、評価して、3 つのアウトプットをまとめる段階。審議、交渉、調 停の段階でもある。 第四期: WCD の分析と最終報告書を世界中に広める段階。WCD は報告書の刊行、配 布、および宣伝のための支援を既存の国内・国際機関のネットワークに求める。最終報告書 には、すべてのWCD の調査を納めたCD-ROM含まれる。 3.1 ケーススタディ 10 カ国でのケーススタディが行われており、その国名、ダム名等については表1 に 示すとおりである。 ケーススタディによって、特定のダム、河川流域についての経験が、重点的に詳細 に検討され、それぞれの事業に関連する計画立案・意志決定の過程が、事業の結果に どのような結果を及ぼしたかについて、利害関係者の経験が調査される。 インドと中国については、これらの国の経験の多様性を捕捉するため、国全体の経験 がレビューされ、それぞれについて多数のダムをとりあげる。旧ソ連については、中央 計画経済から市場経済への移行および、州から独立した共和国への移行という特別の事 情があるので、これらがダムに及ぼす影響を検討するため、特別のペーパーが作成され ている。 ケーススタディは、透明性の高い「参加プロセス」によって実施される。様々な当事 者の意見や展望を記録すると同時に、プロジェクトの実績に関して出来る限りのデータ を集めることを目的としている。 表1 ケーススタディ実施の国・ダム・流域等
3.2 テーマ別レビュー テーマ別レビューは、大ダムおよびその代替案に関する計画および意志決定につきも のの「激しい論争」を理解し、これから学ぼうというWCD の公約を最も大胆に表現し ているものである。5 つの主テーマが特定され、表- の17 のテーマ毎にレビューがおこなわれている。 世界のダムの過去から現在にわたる手法・経験を地球規模での専門知識のネットワ ークにより分析する。これにより、水資源・エネルギーの持続可能な管理という、これ までより幅広い観点での意志決定過程を改善する手段・方法論・手続きが明らかにされ る。 表2 テーマ別レビューの1 7 のテーマ
3.3 クロスチェック調査 ケーススタディ、テーマ別レビューで得られる見識に付け加えられ、その意味で業務 計画の中の他の作業の「クロスチェック」となると考えられるアンケート調査である。 標本の規模は、統計的に意味のある結論を出す程度のものではないが、ダムに関する論 争における重要課題が何かを示すこととなる。以下の条件で選定され、集められた12 0 余基のダムについてのアンケート調査の回答が統計解析されている。
クロスチェック'イ査は、個別のダム事業についての評価はしない。 3.4 地域協議とアウトリーチ 地域協議は、世界各国の大ダムやその代替案から得られた経験、並びに政府、一般市 民、水道会社、電力会社、国際機関、民間企業、学術・研究機関などによって代表され る利益から得られた多種多様な教訓を照合する手段である。 次の4 つの地域協議が開催され、それぞれにおいて3 0 から3 2 編の発表があった。
発表は、あらかじめ提出したアブストラクトをもとに招待されたものが行い、コミッ ショナーの質問に答える形式のものである。メディアを含めて、オブザーバーが招待さ れるが、発言権はない。 WCD の主目的の一つが、世界中の関係個人・団体とのコンタクトを確保することで ある。このための手段の一つが、ダムやその代替案の多種多様な側面に関する情報提供 を受けることである。一般的レベルでは、WCD は、ホームページへのアップロードや ニュースレターへの反応という形での情報提供を受ける。具体的な事例のレベルでは、 利害関係者協議プロセスを通じて情報を受ける。利害関係者協議プロセスには、上記の 地域協議や、ケーススタディにおける協議が含まれる。 提出される情報は、テーマ別レビュー、クロスチェック調査、ケーススタディ、その ほかの関連問題等さまざまなものに関係したものが考えられる。 4 今後の作業2000 年3 月現在で、ケーススタディ、テーマ別レビュー、クロスチェック調査等 の「知識ベース」はとりまとめられつつある。これと平行して、上記3 に掲げた3 つの アウトプットすなわち、(1)大ダムとその代替案のレビュー、(2)オプション評価 と意志決定過程の枠組み、(3 )国際的に受け入れられる基準と指針がドラフトされつ つある。これらの「知識ベース」のサマリーは、4 月7 日、8 日にケープタウンで開催 されるWCD フォーラムにおいてレビューされる。委員もこのフォーラムに参加し、フ ォーラムに引き続いて委員会が開催される。ここにおいては、2001 年4 月以降にW CD の業務を受け継ぐ組織、メカニズムが検討される。 WCD の最終報告書は、2000 年の11 月に発表され、2001 年3 月まで、世界 各国でその紹介、普及のためのワークショップが開催される予定である。
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